COLUMN海外メディア戦略コラム
韓国メディア完全攻略—K-コンテンツ時代のPRとプレスリリース配信の最適解
K-POPやドラマ、ゲームに代表されるK-カルチャーの広がりにより、ソウル発のニュースは国境を越えて届くようになりました。投資家やファン、現場の実務家にきちんと届けるには、韓国メディアの構造やポータル文化、映像を軸にした編集観をふまえたPRとプレスリリース配信の設計が欠かせません。
この記事では、K-コンテンツの動きを背景に、到達チャネル、原稿設計、可視化素材、測定の手順を整理しました。最後にPressReleaseJapanの関連事例も取り上げ、すぐに実務へ落とし込みやすい形まで具体化しています。
目次
韓国のメディア全体像—ポータルと放送が牽引する報道動線

韓国では、検索とニュース消費のハブとしてNaverの存在感が大きく、Googleの利用が伸びつつある今も、ポータル発の可視化が基本線です。通信社(Yonhap)や全国紙、放送局(JTBC・SBS・KBS・MBC)のニュースがNaverニュース面に集約され、そこからトラフィックが再配分される構造になっています。
そのため、初報の到達は「通信社→主要紙・放送→ポータル掲出→SNS・動画」という流れで波及させる設計がベースになります。
K-コンテンツの外需拡大は依然として強く、知財収支や輸出にも現れています。一方で映画のように回復にばらつきが出ている領域もあり、題材や入り口によって編集部の関心は変わります。PR側は「作品・IP・タレント」のストーリーと、「市場・指標・国際展開」の数字を同じ台本にまとめ、媒体ごとに見出しと冒頭段落を差し替える前提で運用していきます。
業界特性と編集観—K-コンテンツの言語と数字
英語媒体(The Korea Herald、Korea JoongAng Daily)は国際読者を意識し、政策・産業・カルチャーの交点を短く端的に求めます。韓国語の全国紙や放送は一次性と社会性を重視し、ポータルでは「見出し×サムネイル×要点」で一目で分かるかどうかが問われます。
どの媒体でも共通しているのは、統一された固有名詞表記(人名・作品名・会社名)と、リリース冒頭で「誰が・何を・いつ・どこで・どの指標で」を示す骨組みです。ここが揃っているかどうかが、最低限の合格ラインになります。
カルチャー経済の視点では、K-コンテンツが関連商品やサービスまで広がる「乗数効果」が、政策サイドや投資家の共通言語になっています。海外に届くニュースでは、視聴・販売・来場・越境ECなどのKPIを置き、前回比や他地域との比較軸を添えることで、二次引用されやすい構造になります。
実践ノウハウ—海外向けを含むプレスリリース配信の設計

実務は「配信チャネル」「原稿設計」「可視化素材」「測定」の4つで組み立てます。配信では、一次情報の軸としてワイヤ(国際配信)+自社英文ページ+韓国語ページを同時解禁し、韓国向けにはYonhap向けの事実要約と、放送・ポータル向けの「視覚素材セット」をあわせて用意します。
ポータル面では、カテゴリの選び方とサムネイルの質がクリックを左右します。主要カットは、見出しと組み合わせる横長(目安として幅1120px前後)の画像と、SNS用の短尺動画をセットにして準備しておくと運用がスムーズです。
原稿は「見出し=事実+示唆」「リード=KPIとスケジュール」「本文=背景・方法・比較・権利・免責」を基本の順番とします。英語版・韓国語版・日本語版の表現と数値を突き合わせ、地名・施設名・日付表記(例:YYYY-MM-DD/現地時刻)も統一します。
K-コンテンツ関連では、出演者・制作会社・配給・配信地域・サウンドトラックの権利など、「二次利用で最低限必要な項目」をテンプレート化し、リリース冒頭にまとまっている状態にしておくと、編集部の負担を下げられます。
素材の最小構成は、「キーファクトをまとめた1枚」「スチール3枚(人物・場・プロダクト)」「30秒前後の縦横クリップ」「地域別の実績表」「ロゴとクレジット表記」です。キャプションは英語と韓国語の併記を基本にします。
測定は「初動1〜3時間のポータル掲出と露出件数→24時間の二次記事・SNS→1週間の海外引用・字幕付き再配布」という時間軸で見ていきます。そのうえで、見出し・サムネイル・要点図を微調整しながら、ABテストで改善を回していきます。
NGと回避策—ポータル最適化、表記揺れ、過剰主張
よくあるNGは、ポータル側の文脈に合っていない「主語の弱い見出し」と、画像の縦横・比率の不整合です。回避するには、見出しに必ず主語(会社・作品)+動詞(発表・開始・受賞など)+比較軸(初・最多・前年比など)を入れ、サムネイルは文字情報を最小限に抑え、人物・場面・アイコンの象徴性を優先します。
多言語展開では、固有名詞や人名のハングル/英字表記が揺れやすくなります。公式表記(例:NCT、aespa、作品タイトルのローマナイズ)を基準に統一し、カンマや小数点の使い方も英語・韓国語でルール化しておきます。
もう一つの落とし穴が、「勢いだけに頼った過剰な言い回し」です。視聴数・売上・来場といった数字は、期間・対象・比較対象を明記し、第三者のデータや公的統計へのリンクを示して、検証できる状態をつくります。映画のようにセグメント差が大きい領域では、ジャンル・チャネル・時期を分けて語るのが安全です。
事例解説:PressReleaseJapanの関連リリース参考例
KARA Japan Tour 2025の告知(2025年5月)
会期・会場・演目を整理し、ファンが最初に知りたい導線(日時・会場名)を冒頭に置いた構成です。K-POPの国際ファンベースに合わせ、英語でもすぐに把握できるよう設計された好例です。
https://pressreleasejapan.net/2025/05/23/kara-to-launch-japan-tour-in-2025/
T1(韓国eスポーツ)との人材育成連携(2025年6月)
提携先の固有名詞価値を見出しに含め、教育カリキュラムと対象者を明示したリリースです。スポーツ×教育という交差点で、メディア側が扱いやすい「社会的意義+実務情報」のバランスが取れています。
K-POP育成アカデミー関連の共同プロジェクト着手(2024年12月)
今後の制作・オーディション計画を明記し、対象地域と時期を整理した構成です。読者が「参加・視聴・応募」へ進む導線が意識されており、実務にも載せやすい設計になっています。
LOTTEグループ関連のCVC投資発表(2025年10月/2024年12月)
投資額・相手先・技術領域を冒頭で列挙し、産業・資本の話題として一般経済面にも展開しやすい体裁です。
https://pressreleasejapan.net/2025/10/06/lotte-holdings-healthcare-and-biopharmaceutical-cvc-announces-investment-in-cartography-biosciences/
https://pressreleasejapan.net/2024/12/10/lotte-holdings-healthcare-and-biopharmaceutical-corporate-venture-capital-made-its-first-investment-in-nuvig-therapeutics/
最新動向と示唆—検索と配信の”二段構え”を磨く

2025年の韓国市場では、Naver中心のポータル文化が続きつつ、Googleの利用増加や動画起点の視聴が広がっています。初報では「事実の一文」で通信社・主要紙・放送に通し、その後の波でポータル露出とSNS短尺動画を掛け合わせる「二段構え」が有効といわれています。
英語媒体は国際文脈を、韓国語媒体は生活や経済との接続を重視する傾向があり、同じニュースでも見出し・先頭段落・サムネイルを媒体ごとに最適化する運用が成果に直結するため理想とされています。
K-コンテンツは音楽・ドラマ・Webtoon・ゲームのクロスIP化によって収益機会を広げ、知財収支や関連商品の輸出にも波及しています。今後は、IPの国際流通と権利処理の透明性が「ニュースの信用」を左右します。リリースでは、権利者の表記、地域別の展開、翻案予定や二次利用条件を明確にし、比較可能なKPIで成果を示す姿勢が求められます。
まとめ
韓国のニュース流通は、ことエンタメ系の情報については通信社と放送を起点に、Naverポータルで可視化が一気に広がる独特の構造にあります。PRとプレスリリース配信では、初報の一次性と視覚素材の即応性を両立させ、英語版と韓国語版の整合を徹底することが前提になります。
K-コンテンツの文脈では、タレント・作品・IPの物語と、視聴・販売・来場・越境ECなどのKPIを同じ台本に載せ、媒体ごとに見出しと要点図を差し替える運用が有効です。映画のように振れ幅の大きい分野では、時期やチャネルごとに成果を切り分けて語ることで、誤読を防げます。
PressReleaseJapanの参考例が示すように、日時・場所・出演・URL・数値を冒頭300字に凝縮し、可能であればサムネイルと短尺動画を同時解禁する「二段構え」を習慣化することが、海外露出の歩留まりを高めます。国際波及を狙うなら、英韓併記のキャプションと権利表記を標準装備とし、ポータルとSNSの両輪で「読まれて引用される」配信を実現していきましょう。



