COLUMN海外メディア戦略コラム
グローバルマーケティングの最新事例【米大統領選2020①】
本サイトでは、グローバルな視点から世界の様々な最新情報をお届けしてまいりました。グローバルマーケティングの分野で成功を収めるためには、世界の最新情報に敏感に耳を傾け、随時戦略を検討していく必要があるからです。
そんな中、2020年11月に行われるアメリカ大統領選挙に向けて候補者が続々と意思表明を行っており、世界の経済に非常に大きな影響を及ぼすかもしれない数々の提案が行われているのをご存知でしょうか。前回の大統領選では、現大統領のトランプ大統領とヒラリー・クリントン氏が最後の最後まで激闘を繰り広げたことが記憶に新しいですが、両者とも人気SNSのTwitterやInstagramを活用し、活発に情報発信を行い、若者を含めた有権者の獲得を行い、SNS上でお互いのネガティブキャンペーン合戦を繰り広げたたことも印象的でした。アメリカでは大統領選に限らず、ライバル企業の商品との比較広告などは一般的で、ネガティブキャンペーンも重要なアピールの手法の一つです。
2020年の大統領選で新たな大統領が誕生し、新しい政策が実施された場合、世界経済への影響は図り知れません。そこで本記事では、「アメリカ大統領選2020に関する考察その1」として、有力候補者が掲げた政策の中でも、特に経済への影響が大きいであろう政策についてピックアップしてお届けします。
1.アメリカの大統領選挙についての基本情報
アメリカの大統領選挙は4年に1度実施されます。アメリカ大統領が2016年にオバマ元大統領からトランプ現大統領に移った際のアメリカ大統領選を鮮明に覚えている方も多いことでしょう。あれからすでに3年近くが経過し、現在、各党は2020年のアメリカ大統領選挙に向け、党代表の選出に動き出しています。その中でも特に、トランプ大統領の対抗馬となるであろう民主党の代表候補の発言や政策に注目が集まっています。
アメリカの大統領の任期は最大で8年です。現行の大統領が4年終えた後、さらに4年続ける意思を表明し大統領選挙で勝利すれば、現大統領の継続が決定します。これまでの歴史では、アメリカ経済の急激な悪化や大統領の大スキャンダルがない限り、現行の大統領が再選を果たすことが大半でしたが、アメリカで実施されたいくつかのアンケートの結果を見ると、トランプ大統領を支持しないと答えた有権者が支持層を上回っており、2020年11月には激戦が繰り広げられるだろうと予想されています。
下記の図は、トランプ大統領に対するアンケート調査の1例ですが、経済分野においては有権者からの一定の理解がある一方で、その他項目においては批判的な意見が上回る結果となりました。
トランプ大統領に対する国民の意見(数値は%):
2019年5月に実施されたキニピアク大学の調査をJETROがまとめたもの(参照)
2.注目候補者による政策案
アメリカでは、トランプ政権により一部の企業や人々の経済状況は良くなったものの、貧富の差の拡大や将来に潜在的に潜む失業への不安、銃乱射事件を始めとした治安の悪化、様々な国との貿易摩擦や対立など、アメリカの未来を不安視する声も多く聞こえてくるのが現状です。
候補者たちは、アメリカの今と未来を変えるために独自の政策を打ち出しています。今回は、候補者によって提案された様々な政策の中でも、アメリカおよび世界の経済事情を大きく変える可能性を秘めた政策を提案している民主党の2名の候補者とその政策および背景について紹介します。
1)エリザベス・ウォーレン氏が提案する資本主義の「改造」
これまでの大統領および候補者の多くは、アメリカの資本主義の仕組みを尊重しつつ最大限の成果を上げる政策を考案してきたのに対し、マサチューセッツ州の上院議員エリザベス・ウォーレン氏は、資本主義の枠組みを大きく崩すことを前提としています。
その理由として、アメリカの昨今の問題を作った最たるものは利益ばかりを追求してきた大企業の隆盛であるという考えがあります。ウォーレン氏が掲げるアメリカ国内における経済格差の改善を図るための政策として、大手ハイテク企業を規制化におくことや、営業利益を第一に考えている民間の医療保険業界の廃止、また利益を追及している大学運営にもストップをかけるなどの政策を打ち出しています。また、5000万ドル以上の資産に対し2~3%の税金を課すとともに、大企業の利益に対する7%の新税の導入や、25万ドル超の所得に対して14.8%の税金を課すことで、社会保障の充填に当てる資金を捻出しようとしており、これにより富裕層と企業への税金は大幅に引き上げられることになるでしょう。
あまりにも大きな改造であるため、現実離れした案にも聞こえますが、一部のエコノミストたちはこの政策によるアメリカ経済の発展の可能性を支持しており、近年、雇用問題で苦しんでいる人々たちからの大きな支持が追い風になる可能性も大いにあります。また、アメリカでは資本主義がもたらした競争主義に疲弊している人々も多くいるのが現状で、中間層および低所得層から大きな支持を受ける可能性は十分にあるでしょう。
その一方で、関連する企業はこの政策におびえる日々を過ごしています。もしこの政策が実行されれば、関連する企業は会社のあり方を大きく変える必要性が出てくるからです。2019年10月、ウォーレン氏の民主党候補支持率は首位に躍り出たというニュースが入ってきました。トランプ現大統領の対抗馬としてウォーレン氏の今後の発言にも注目が集まります。
2)アンドリュー・ヤン氏が提案する付加価値税の導入
本記事で紹介するもう1人の候補者は、華人系起業家として知られるアンドリュー・ヤン氏です。ヤン氏は、現在のアメリカにおいて経済格差があまりにも深刻な問題であると指摘し、その中心にあるのがテクノロジーの急激な進化だと訴えています。テクノロジーによって人々の生活が豊かになる一方、テクノロジーがもたらしたオートメーション化は、製造業や運送業を中心とした多くの人々の仕事を奪うことになると主張します。他の候補者はテクノロジーの恩恵ばかりに注目し、テクノロジー社会がもたらす危険性を見ていないという指摘は、テクノロジーの分野で活躍してきたヤン氏だからこそいえる発言でしょう。
そんなアンドリュー・ヤン氏が提案しているのは、「自由の配分」を保障するとした「ユニバーサル・ベーシック・インカム」という政策です。これは、アメリカの成人すべてに毎月1000ドルを配分するというあまりにも画期的な政策で、アメリカ人がより豊かに自らの人生を生き、誰もがやりたいことにお金を費やすことを可能にするといいます。低所得者層のみへ資金援助ではなく、あくまでも全成人に対して、大規模な資金配分を行うというのがこの政策の特徴です。その資金の財源は主に2つ。1つ目は、近年のテクノロジーの進歩によって大きな利益を獲得している大企業に対し、大規模な増税を行うこと。現在、大企業の税率は非常に低いため、ここにメスを入れるとのことです。2つ目は、アメリカで付加価値税(日本でいう消費税)を初めて導入すること。これらの税収をユニバーサル・ベーシック・インカムや社会保障の充実に充てるとしています。アンドリュー・ヤン氏は、この政策はアメリカの輝かしい未来のためではなく、多くの人が苦しむ未来が待っているアメリカを変えるために「やらなければならない」政策だと考え、自ら大統領選への出馬を決意しました。起業家としての独自の視点を携えたアンドリュー・ヤン氏の政策にも、経済界から注目が集まっています。
3.終わりに
本記事では、アメリカ大統領選において経済界から注目されている2人の候補者の政策について紹介しました。世界の経済の中心地、アメリカの経済事情が変われば、世界のマーケット市場が大きく揺れ動くことは間違いありません。グローバルマーケティングに携わる方には、ぜひアメリカ大統領選の行方にも注目していただきたいと思います。弊社では、今後もアメリカ大統領選の注目情報について紹介していく予定です。
※本記事の制作は2019年現在のものです。ご了承のほど、お願い申し上げます。