COLUMN海外メディア戦略コラム

SNS×PRで成果を伸ばす:インフルエンサーメディア活用の最前線と運用設計

今や企業やブランドの情報はインフルエンサーが発信する短い動画から得られるのが当たり前になりました。

その影響力は、テレビや新聞といった従来のメディアに匹敵するほどです。SNSのおすすめ機能、厳しくなる広告ルール、そしてAIの進化など、これらが複雑に絡み合う中で、現代のPR活動には、より精密な「企画力」と「発信力」が求められています。

この記事では、SNSを起点とした新しいPR手法と、プレスリリースを効果的に連動させる方法を、2025年の最新トレンドに沿って分かりやすく整理しました。メディアの選び方から成果を出すための型、炎上などのリスクを避ける方法まで、今日からすぐに使える実践的なノウハウをお届けします。

目次

  • 世界の「今」を知る:短尺動画とSNSで買い物する時代の波
  • 誰に頼む?:業界と国によって違う「影響力」の見極め方
  • 実践ノウハウ:SNS時代のPRとプレスリリースを連動させる設計図
  • これはNG!:信頼を失わないための最新チェックリスト
  • 成功例から学ぶ:話題になった企業のプレスリリース事例
  • 明日から何をすべき?:次の3ヶ月で取り組むこと

 

世界の「今」を知る:短尺動画とSNSで買い物する時代の波

2025年も、インフルエンサー市場は二桁成長を続ける見込みです。企業の広告費は「インフルエンサー × 短い動画 × 商品購入(ソーシャルコマース)」の組み合わせに大きくシフトしています。これまでは動画が最後まで見られたか(視聴完了率)が重視されましたが、最近は「保存・共有・コメント」といった、視聴後のファンによる熱心な行動を重視する企業が増えています。

特に、YouTube ショートやTikTokは引き続き情報発信の中心地です。YouTubeでは、毎月20億人以上の人がショート動画を見ており、1日に数百億回も再生されるのが当たり前になりました。動画は「公開後48時間」が最も見られやすいため、インフルエンサーと企業がタイミングを合わせて投稿し、一気に話題を広げる手法が定番となっています。

また、AIが動画作成を手伝ってくれるようになったため、誰でも簡単に質の高い動画を作れるようになりました。しかしその一方で、AIが作った偽情報などの信頼性リスクも高まっています。だからこそ、「これは広告です」と正直に伝えたり、ルールを守ったりすることが、これまで以上に重要になっています。

 

誰に頼む?:業界と国によって違う「影響力」の見極め方

インフルエンサーの影響力は、業界や国によって全く異なります。

  • 美容・ファッション業界: 成功のカギは、ユーザーの口コミ(UGC ※)と世の中のトレンドを結びつけることです。特にZ世代はSNSのおすすめを見て商品を買う傾向が強く、「この香りが好き」「肌触りが最高」といったリアルな感想を言葉にしてもらう仕掛けが、購入の後押しになります。 (※UGC:User Generated Contentの略。ユーザー自身が作成した口コミやSNS投稿のこと)

 

  • IT・ゲーム業界: 新商品発売に合わせたコミュニティ企画や、ライブ配信でのコラボが効果的です。SNSをイベント会場のように使い、「ここだけの限定情報」を出すことでファンを惹きつけます。海外で人気のVTuber(※)と組んで、グローバルに展開する動きも加速しています。 (※VTuber:2Dや3Dのアバターを使って活動する動画配信者のこと)

 

注意点(特に海外): ヨーロッパでは広告に関するルールが年々厳しくなっています。例えばイギリスやEUでは、広告であることを隠していたり、誤解を招く表現をしたりすると、厳しいペナルティが課されることがあります。海外でPRを行う際は、その国のルールに合わせることが必須です。

 

実践ノウハウ:SNS時代のPRとプレスリリースを連動させる設計図

SNSでの発信と、メディア向けのプレスリリース。この2つを連動させると、効果が最大化します。

  • ステップ1:コンセプトを統一する まず、キャンペーンで「誰に、何を、なぜ今伝えたいのか」という中心メッセージを、30秒の短い動画の台本にまとめます。そして、全く同じ構成で、プレスリリースの冒頭部分(約150文字)を作成します。「新しい事実 → その証拠 → ユーザーにとっての価値 → 次のアクション」という流れを意識することで、SNSでもニュースでも、要点が瞬時に伝わるようになります。

 

  • ステップ2:タイミングを合わせる インフルエンサーのSNS投稿と、自社のプレスリリース発表の時間をピッタリ合わせます。プレスリリース公開から6時間を「勝負の時間」と位置づけ、①インフルエンサーによる投稿、②自社SNSでの補足説明、③メディア向け資料の提供、を一気に行い、話題を最大化させます。特に短い動画では「サムネイル・冒頭3秒・字幕」の3つが重要で、視聴者を惹きつけて共有したくなる工夫を凝らしましょう。

  • ステップ3:成果を2つの視点で測る 成果は2つの視点から測定します。1つ目は、保存数、共有数、クリック数といった「SNS上での直接的な成果」。2つ目は、ニュース記事になった数、自社サイトへのリンクが増えた数、会社名や商品名での検索が増えた数といった「PR活動による間接的な成果」です。特にYouTube ショートはチャンネル登録に繋がりやすいため、動画1本で何人登録者が増えたかを追いかけるのがおすすめです。

 

 

これはNG!:信頼を失わないための最新チェックリスト

信頼を失う行為は、一瞬でブランド価値を傷つけます。以下の3つは絶対に避けましょう。

  • NG1:あいまいな「広告」表示 「#PR」や「#コラボ」といったタグだけでは、広告であることが伝わりにくい場合があります。【対策】「#広告」と明記したり、「〇〇社から商品を提供いただきました」と言葉で説明したりするなど、誰が見ても分かるように伝えましょう。動画内で口頭で伝え、概要欄にも書くなど、二重で示すのが理想です。

 

  • NG2:やらせレビューやファンの偽装 AIを使って偽のレビューを書いたり、お金でフォロワーを買ったりする行為は、法律違反となり罰金が科される可能性があります。【対策】 レビューの収集や掲載に関する社内ルールを明確にし、米国のFTC(連邦取引委員会)などが示す国際的なガイドラインに沿って運用しましょう。

 

  • NG3:AIで作ったコンテンツの権利トラブル AIで生成した映像や音楽を安易に使うと、著作権の問題が起こりがちです。 【対策】AIが作ったものであることを明記し、商用利用が許可された素材のみを使いましょう。いつ、誰が、どんな指示(プロンプト)で生成し、どんな権利があるのかを記録・管理することが重要です。

 

成功例から学ぶ:話題になった企業のプレスリリース事例

  • 【VTuberの海外展開】日本テレビ子会社のVTuber事務所 国内での成功を元に、海外ブランドとのコラボやライブコマース(ライブ配信での商品販売)を強化。VTuberという日本の強みを活かした海外展開の好例です。

https://pressreleasejapan.net/2025/07/03/nippon-tv-s-group-company-clan-entertainment-expands-its-creative-vision-globally/

  • 【リアル体験×SNS】講談社の体験型イベント「KODANSHA HOUSE」 人気漫画の世界に没入できるイベントを開催。来場者が思わずSNSに投稿したくなるような仕掛けを用意し、口コミでの拡散を狙った、リアルとSNSを組み合わせたお手本です。

https://pressreleasejapan.net/2025/09/13/kodansha-house-to-be-held-as-an-immersive-pop-up-event-showcasing-the-diversity-of-manga-through-popular-kodansha-works/

  • 【ゲームの初速アップ】『PANDOLAND』(ゲームフリーク×ワンダープラネット) 友達を招待すると特典がもらえるキャンペーンと、複数のSNSでの情報発信を組み合わせ、ファンコミュニティの力でゲームのスタートダッシュを成功させました。

https://pressreleasejapan.net/2025/04/21/pandoland-goes-global-game-freak-wonderplanet-team-up-for-a-fun-filled-mobile-adventure/

  • 【ファン心理の活用】ホロライブ×ジュエリー企画 人気VTuberの世界観をジュエリーにする企画。予約限定という希少性や、魅力的なデザインでファンの「欲しい!」という気持ちを刺激し、SNSでの「保存」や「共有」を巧みに促しました。

https://pressreleasejapan.net/2025/04/21/pandoland-goes-global-game-freak-wまとめonderplanet-team-up-for-a-fun-filled-mobile-adventure/

 

 明日から何をすべき?:次の3ヶ月で取り組むこと

最後に、次の四半期(3ヶ月)で取り組むべきことを3つにまとめます。

    1. 「台本→動画素材→プレスリリース」の同時運用を徹底する まずは、YouTube ショートやTikTokの動画台本と、プレスリリースの内容を、常に同じ骨子で、同じ時刻に発表する運用を社内の当たり前にしましょう。

 

    1. ルールブックを最新版に更新する 「広告の表示」「レビューの運用」「コンテンツの権利」の3点について、日本だけでなく、ビジネスを展開する国や地域の法律に合わせて社内ルールを見直しましょう。英国ASAや米国FTCなど、各国の公的機関が出している一次情報を定期的にチェックする体制を作ることが不可欠です。

 

  1. 成果の測り方を「見た後の行動」に変える これからは、単なる再生数ではなく、保存数・共有数・検索してくれたか・サイトに登録してくれたか、といった「ファンの熱量」を一貫して追いかける仕組みに移行しましょう。AIのおかげで動画制作は楽になります。だからこそ、何を伝え、誰に届け、どう心を動かしたのかを設計し、検証することにこそ価値が生まれます。

 

まとめ

専門用語を避け、行動を促すシンプルな言葉で締めくくりました。

2025年の広報・PR活動では、インフルエンサーが発信する短い動画がますます重要になり、「1つのメッセージを、SNSとプレスリリースで同時に発信する」ことが成功のカギとなります。インフルエンサーを選ぶ際は、業界の特性や各国のルールをしっかり理解し、発表から6時間以内のスタートダッシュを計画的に仕掛けましょう。

便利なAIツールを使いこなしつつも、「広告であることの明示」や「やらせレビューの禁止」といった信頼に関わるルールを徹底することが、ブランドを守る土台となります。ご紹介した成功事例のように、リアルな体験やファンの熱狂を巻き込むことで、成果は最大化します。

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