COLUMN海外メディア戦略コラム
インターナショナル・マーケティングとグローバル・マーケティングの6つの違い
グローバル・マーケティングとインターナショナル・マーケティング。あなたはこれらの違いがわかりますか?
マーケティングに関心を持っているという方でも時折混同されることのあるこれら2つのアプローチは、実はまったく異なるものです。その違いはブランドやサービス、プロダクトをどのように世界化していくのかというマーケティング戦略におけるコンセプトの違いです。
話を進めるにあたり、まずはそれぞれのコンセプトについて確認しておきましょう:
グローバル・マーケティングのコンセプト
最近ではデジタル広告を活用して展開されるマーケティング戦略で、世界規模のマーケットを対象に統一した展開を行うもの。アジアやヨーロッパといった地域、日本やアメリカなどといった国ごとにセグメント化することなく、ユニバーサルに展開します。代表的な企業がNikeで、全世界共通のイメージを提供することで、グローバルにマーケティング戦略としています。
インターナショナル・マーケティングのコンセプト
ターゲットとする国を特定して個別に実施されるマーケティング戦略。それぞれの国における消費者の購買行動や嗜好を細かく分析し、ブランディングやパッケージングにおいてカスタマイズを実施します。ユニバーサルなイメージを提供するのではなく、ターゲットとするマーケットの「好み」に合わせた戦略を展開していきます。
上記でおわかりのように、世界的に展開するのか、あるいは個別にカスタマイズして展開するのかというコンセプトの違いがあります。これら2つのアプローチにおいてはさらに具体的な違いが存在し、その違いを理解することができることで海外マーケティングをより適切に行えるようになります。
ここからはグローバル・マーケティングとインターナショナル・マーケティングにおける6つの代表的な違いをご紹介します。
1. プロダクトやサービスをどう扱うか
インターナショナル・マーケティングの戦略は、展開しようとしているサービスやプロダクトをそれぞれの国のマーケットに適した形にカスタマイズすること。場合によってはその国のためだけに開発することもあります。本国で流通しているそのままのかたちで展開するのではなく、マーケットの「好み」に合わせて手を加えていきます。
一方、サービスやプロダクトを「ユニバーサル化」することを目指すのがグローバル・マーケティング戦略。インターナショナル・マーケティングのように各国のマーケットに合わせてブランディングを調整したりパッケージングを変更したりすることなく、同じものを各国で展開することで共通のマーケティング・メッセージを伝えます。
2. マーケティング部門をどうスタッフィングするか
インターナショナル・マーケティング戦略においては、各国向けにカスタマイズしたサービスやプロダクトを提供することが重要であるため、各国にマーケティング部門のスタッフを配置します。また、言語だけでなくそれぞれの地域性や文化についても熟知していることが求められるため、現地でスタッフィングを行うのが一般的。
一方のグローバル・マーケティングでは本国(拠点)のマーケティング部門でほぼすべてのオペレーションを実施します。各マーケットにおけるコミュニケーション・ハブとして数名のスタッフを配置することはありますが、基本的には中央集権的なスタッフィングを行います。
3. 広告をどう展開していくか
インターナショナル・マーケティングにおいては、まずなによりもそれぞれの国でもっとも効率的にマーケティング・メッセージを伝えることを第一に広告を展開します。それぞれのマーケットの言語にローカライズしながら、どういったメディアを使うのがもっとも効率的かも考慮しながら広告コンテンツをカスタマイズしていきます。
一方、グローバル・マーケティングでは、マーケティング・メッセージをより多くの消費者に一度に伝えることのできる広告チャネルを利用。代表的なものがテレビ・コマーシャルやラジオで、グローバルな規模でアプローチすることを目指します。字幕や吹き替えなどで基本的なローカライズは実施しますが、コンテンツのクオリティを左右する要素には手を加えず、同じメッセージを伝えることを重視しています。
4. SNSにおいてどう展開するか
SNSの公式アカウントをどのように展開するのかという点でも、これら2つのアプローチには違いがあります。
インターナショナル・マーケティングでは、各国向けにそれぞれ公式のSNSアカウントを展開。現地の言葉にローカライズして展開することで消費者から高いエンゲージメントを獲得することができますし、地域別に実施しているキャンペーンのプラットフォームとしても効率的に利用することが可能。
一方のグローバル・マーケティングではSNSのプラットフォームごとにひとつの公式アカウントとするのが一般的です。こうすることで統一したマーケティング・メッセージを伝えやすくなります。
5. 戦略をどのように決定していくか
インターナショナル・マーケティングにおける戦略決定においては、各マーケットの購買行動や文化などに配慮をすることが大切。そのため、各国のマーケティング部門が独自にリサーチを行い、もっとも効果的なマーケティング戦略を決めていく方法がとられます。
一方のグローバル・マーケティングでは、全世界でどういった戦略を行うのかを本国のマーケティング部門が決めるのが一般的。企業によっては各国の拠点にマーケティング・スタッフを配置していないケースもあり、まさに本部が手綱を締める戦略決定のワークフローとなっています。
6. どのような市場調査を実施するか
インターナショナル・マーケティング戦略においては、一般的かつ徹底的な市場調査が実施されます。わたしたちが日本国内で市場調査を行うのと同じように、各国のマーケットの数だけそれぞれ独自に調査を実施していくのです。調査にあたってはマーケット・トレンドを適切に分析するだけでなく、どういった競争原理が働いているのか、どういったニーズが隠れているのか、そして具体的にどのような戦略をとっていくのかを決めていきます。
一方のグローバル・マーケティング戦略においては事情が異なります。前者と比較するとこちらはいくぶん「表層的」。というのも、グローバル・マーケティングにおいては各マーケットのためにカスタマイズされた戦略ではなく、グローバル展開のための統一されたマーケティング戦略を策定するため。ただし、展開を計画しているマーケットに潜在的なニーズがあるのかどうかについては徹底的に市場調査を行います。
まとめ
いかがでしょうか。グローバル・マーケティングとインターナショナル・マーケティングの具体的な違いについておわかりいただけたかと思います。これら2つのアプローチのどちらを採用するかは、企業として海外展開をどういったコンセプトで行っていくのかに基づいており、それぞれに得られるメリットや期待される成果において特徴があります。
いずれのスタンスを採用するにせよ、まずは企業として備えるビジョンやミッションをベースとして、より好ましい結果の期待できる方針を採択すること。どちらかのアプローチを選択することなしに、成果の伴う海外展開を行うことはできません。