COLUMN 海外メディア戦略コラム

インフルエンサー・マーケティングに潜む危機とその対処法【後編】

前回はインフルエンサー・マーケティングに潜む危機の5つのタイプについてご説明しました。今回はそれらの危機に適切に対応するための6つのステップについてご紹介していきましょう。

ステップ①:危機のタイプを見極める

どのような危機であれ、潜在的なダメージのレベルを適切に理解するためには、それがどのような性質のものかを見極めることが大切です。危機について明確な認識を持つことができれば、どの程度まで対応する必要があるのかを決定するとともに、悪影響のさらなる拡大を適切にコントロールすることが可能になります。

もしメガ・インフルエンサーとパートナーシップを結んでいるとしたら、その危機はソーシャル・メディアにとどまらず雑誌などのほかのメディアで議論の的となるかもしれません。この場合はソーシャル・メディアを超えた対応を行わなければなりません。

 

ステップ②:必要に応じた予防策を講じる

マーク・ザッカーバーグのように声明を出すまで5日間待つようなことはやめましょう。時間をかけている間に、第三者がその評判にネガティブに影響するような憶測を流してしまうかもしれません。

消費者はあなたがキャンペーンを自ら行ったのかどうか、あるいはインフルエンサーの用意したコンテンツを事前に確認していたのかいないのかについて知りませんし、特に知ろうとも思っていません。つまり、その時流布している言説に左右される傾向にあるのです。

ここで具体的な例をご紹介。オーラルB (Oral-B) をプールサイドで使用しているInstagramのコンテンツは、ブランドの判断としては疑問符のつくところでしょう。プールに歯ブラシを持ち込むひとはいませんし、そもそも日常的なデンタルケアを行うのにふさわしい場所でもありません。

オーラルBがこのインフルエンサーとパートナー契約を結んでいることは明白であり、こういったコンテンツはブランドのイメージに影響を及ぼします。このコンテンツによって危機へと発展することはないでしょうが、それでも馬鹿げた内容を含んでいることは明らかであり、その責任がインフルエンサーとブランドのどちらにあるかはわからないままです。

そのため、潜在的な危機や失態には素早く対応することを心がけましょう。パートナーシップの関係を明確にし、必要があれば謝罪を行い、必要に応じてインフルエンサーとの関係を解消することを宣言するのです。

ブランドの価値についてコミュニティに直接伝えることに責任を持つこと。ブランドが体現するものについて正しく伝えることに注力し、もしインフルエンサーがそれに反するような振る舞いをしてしまった場合には、きちんと失望を表明することが大切です。

しかしながらあらゆる危機に対する事前の予防策が必要というわけではありません。前回ご紹介したコーラルのケースのような危機は、時間が経てば自然と消滅していきます。追加で手を打とうとすることで、かえって議論を巻き起こしてしまうということも頭に入れておきましょう。

 

ステップ③:コミュニティの声に耳を傾ける

ソーシャル・メディア第一主義の世界においては、ニュースやコンテンツが瞬く間に広まっていくことであっという間に評判がガタ落ちすることがありえます。しかしそれは同時にブランドについてどのように認識されているのかをモニタリングできる機会でもあります。

多くの人びとが怒りや不満をオンラインでシェアしている状況では、ターゲットとしているコミュニティやより広い消費者マーケットがブランドに何を期待しているのかを聞き取ることは容易ではありません。まずは一つひとつのコメントに慎重に耳を傾けて、適切に対応していくことです。

アメリカで議論を巻き起こしたペプシの一件が代表的な例でしょう。多くの人びとは、ケンダル・ジェンナーを起用したペプシの広告に対して不愉快であると表明し、ブランド側は彼らの不満に対応する方向での対策を実施。

キャンペーンの主旨を正しく伝えることができていなかったとしてペプシは公式に謝罪し、ケンダル・ジェンナーをも引っ張り出してこのスター級のインフルエンサーに遺憾の念を表明させることで幕引きを行いました。

 

ステップ④:複数のインフルエンサーとパートナーを組む

複数のインフルエンサーとパートナーを組むことで、一人のインフルエンサーの言動によってブランドのイメージが左右されるといった事態を回避することができます。つまり、パートナーが複数いれば、あるインフルエンサーがブランドの評判にマイナスの影響を与えたとしても、ほかのインフルエンサーがブランドの意図するやり方で作られたコンテンツをシェアすることで、確実に挽回していけるのです。

ブランド自身が躍起になって評判を維持しようと試みるよりも、外部からのポジティブなコメントの方が常に信頼されるもの。危機が発生した際には、十分信頼できるインフルエンサーにサポートを依頼しましょう。

 

ステップ⑤:事前に戦略をシミュレーション

インフルエンサーによる危機を適切にマネジメントするのにもっとも大切なステップであり、もしこのステップを踏んでいないのであれば、いますぐに行うべきです。

危機が発生した場合に踏むべき手順をきちんと計画しておくこと。問い合わせの窓口となるべき担当者としては、インフルエンサー・マーケティング・マネージャーやオンライン・マーケティング・マネージャー、危機管理マネージャー、あるいはCEOがよいでしょう。また、インフルエンサーがあなたのブランドの価値にそぐわない振る舞いをした際には契約を解除できるようにしておくことも欠かせません。

また、インフルエンサーとパートナー契約を結ぶ前に、可能な限りの情報を集めるようにしてください。ソーシャル・メディアにおけるパフォーマンスに関連したあらゆるデータを集めるだけでなく、彼らの物の見方や信条を完全に理解することが大切です。

マーケティング戦略である以上、もちろんリーチやエンゲージメント率は重要な数値です。しかし、もしインフルエンサーの行動を信用することができなければ、そういった数値は何の役にも立ちません。このステップをきちんと踏んでおけば、前回ご紹介したコンのケースは防ぐことができたかもしれません。

 

ステップ⑥:専用のプラットフォームを利用

インフルエンサー・マーケティングのために開発された専用のプラットフォームを利用することで、潜在的な危機を幾分か回避することができます。これらのソフトウェアではあるインフルエンサーをどういった属性のユーザーがフォローしているか、ブランドやキャンペーンについてどういったハッシュタグが使われているかなどをモニタリングすることが可能。

もちろん、投稿されたコンテンツの感性的なクオリティはデータ化できないため、マニュアルで分析する必要はあります。しかしこういったプラットフォームを利用することで、ブランドについてコメントしているアカウントについての概要を簡単に把握することができ、戦略立案を効率化してくれます。

また、もし期待値を下回るパフォーマンスのインフルエンサーがいる場合、彼らの投稿やスポットをモニタリングする機能を提供しているものもあり、パフォーマンス低下の原因を具体的に分析することも可能です。

 

まとめ

インフルエンサー・マーケティングにおいては思わぬ痛手を被ることもありますが、だからと言って簡単に諦めるべきではありません。インフルエンサー・マーケティング業界はますます高度化してきており、多くのブランドは効果的な手法を見極めようといまも努力を続けています。

その難易度の高さに怖気づいて参加する決断を避けるのではなく、危機をもたらす原因となるインフルエンサーを避ければいいのです。もし過失を悪化させるインフルエンサーに出会ってしまったら、戦略を見直してふたたびトライしてください。

危機は常に学びや成長のためのチャンスです。ここにご紹介したステップに従うことで、危機に適切に対処しつつさらに戦略を練り上げながら高めていくことができるでしょう。

 

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