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各国政府のデジタル・DX状況(イギリス/アメリカ/中国)

日本ではデジタル庁の新設が決まり、政府主導でデジタル化やDXを推し進める動きが活発化しはじめました。デジタル後進国とも呼ばれる日本では、デジタル庁新設によって世界的な競争力が高まることが期待される一方で、どのような取り組みを進めていくのかについて不透明という声もあります。

そこで本記事では、世界各国の政府が行っている政府主導のデジタル対策を調査することで、今後日本に必要なDXを探ってみます。デジタル化に力を入れているさまざまな国の中でも、今回はイギリス、アメリカ、中国について取り上げます。

世界各国の政府によるデジタル・DX対策

世界各国の政府がどれくらいデジタル化やDXに力を入れているのかを調べる指標として、国連経済社会局が報告している「電子政府ランキング」が参考になります。

このランキングは政府がどれだけ電子化を採用しているかという指標のため、必ずしも各国のデジタル化・DXの順位を示すものではありません。しかし、世界のデジタル事情を知る上では大きな参考になると思いますので少し見てみましょう。

※資料はUNDESAの資料を基に日経BPガバメントテクノロジーが作成したもの(参照

1位はデンマークで、2018年の前回調査から引き続きトップの座をキープしています。2位には韓国がランクイン。韓国は2010年、2012年、2014年に3回連続で1位の座を獲得した経歴を誇り、現在でも上位の常連となっています。3位には順位を大きく上げたエストニアが入ります。イギリスは7位、アメリカは9位という結果でした。日本は前回調査から4つランクを落とした14位です。

2020年調査では、政府が電子化を急速に推し進め、20位以内に食い込むことに成功した国が多々あります。日本もうかうかしていたら、このランキングからはじき出されてしまうでしょう。

イギリス、アメリカ、中国における政府のデジタル・DX推進状況

ではいよいよ、イギリス、アメリカ、中国政府のデジタル・DX対策について見ていきましょう。

イギリス政府のデジタル・DX対策

イギリスで日本のデジタル庁に類する組織として、2011年に新設された「Government Digital Service(以下GDS)」をあげることができます。GDSは、優秀な人材を政府に招き入れ、行政のデジタル化を一気に進めることを目指した組織です。

GDSは以下の25サービスをわずか2年弱でオンライン化することに成功し、世界で大きな脚光を浴びました。

1.選挙権の登録
2.職業訓練に関する情報照会
3.失業手当
4.特許の更新
5.土地登記
6.奨学金
7.廃棄物処理業者登録
8.農業補助金の申請
9.運転免許に関する情報照会
10.自動車ナンバープレートの取得、書き換え
11.自動車の名義変更
12.介護者の各種申請
13.個人自立支援手当(PIP)
14.ユニバーサルクレジット
15.源泉徴収
16.確定申告
17.個人用税アカウントの開設
18.税理士による顧客の税手続の管理
19.訪英旅行者向けサービス
20.パスポート
21.ビザ
22.市民権取得申請
23.労働審判所への申立手続
24.刑務所への面会予約
25.弁護士資格の更新手続

実際、上記で紹介した電子政府ランキングでも、2016年にイギリスが1位の座を獲得するなど、イギリスは政府の電子化をものすごいスピードで進めた国として評価されています。

しかし、近年ではGDSが失速してきたとも言われています。その理由として、表面上のデジタル化・DXは進んだものの、政府の奥にある古い慣習はどうしても残っており、革新派と保守派による対立が見られたためとのこと。

日本が新設するデジタル庁は政府直轄の機関であることなど、イギリスのGDSと非常に似た組織になると考えられます。ツールなどを積極的に取り入れることと同時に、政府の中に強く根付いているアナログ気質をどのように改善していくかが課題になりそうです。

 

アメリカ政府のデジタル・DX対策

アメリカで日本のデジタル庁に類する組織として、CTO(最高技術責任者)をあげることができます。アメリカのCTOは、大統領の目指す国家づくりをITの面からサポートする役割を担っており、アメリカでの新興技術開発の奨励や、国民の生活に便利なツール・アプリ開発の推進が主な役割です。

トランプ元大統領のもとでは、世界の先頭を走るテクノロジーをアメリカで発展させることを目指し、以下のテクノロジーに力を入れていました。バイデン大統領はクリーンエネルギーなどの分野に重点を置いていることから、いくつかのテクノロジーは変更されるかも知れません。しかし、世界最先端のテクノロジー開発に力をいれることは同様だと考えられます。

・AIイニシアチブ
・クアンタムコンピューティング
・5G
・ブロードバンドコミュニケーション
・自動運転
・商用ドローン
・STEM教育
・応用製造

またCTOは、それぞれの領域で各省庁が取り組むべきアジェンダを作りこみ、その進行具合をチェックするためのKPIもしっかりと設定されています。

つまりアメリカでは、手探りですすめるデジタル化・DX対策ではなく、確実に実行に移すための戦略がすでに設けられていることがわかります。

日本がデジタル化・DXの方向性を探り探りの中で進めている現状を考えると、アメリカはかなり先を走っているといえそうです。

 

中国政府のデジタル・DX対策

電子政府ランキングでは登場しなかったものの、国内のデジタル化をものすごいスピードで進めているのが中国です。中国政府は2015年に「インターネットプラス政策」を発表し、デジタル化を重点的に進める11分野を決定。国が力をいれる分野を明確に示したことで、産業とデジタル化がうまく融合し、大きな発展を遂げることに成功しました。

1.創業・革新
2.協同製造
3.現代農業
4.スマートエネルギー
5.包摂金融
6.公共サービス
7.物流
8.電子商取引
9.交通
10.生態環境
11.人工知能

しかしながら、中国の事例で興味深いのは、政府自身が積極的にプロジェクトを推し進めるというのではなく、政府が土台を作り、実際には中国国内の企業がプロジェクトを推し進めてきたという点です。中国政府はあくまでもサポートと戦略提案に留まり、民間企業がやりやすいようにサポートしたというのが実際のようです。

中国のデジタル化というと、政府が国民の行動を把握し、必要に応じて処罰なども行う「監視システム」にばかり目が行きがちですが、近年の中国に見る急激な発展は政府の政策がうまくいったからに他なりません。

政府と企業がそれぞれの立場から役割を果たすことでデジタル化に成功した中国の事例から、日本も学べることがあるかもしれません。

終わりに
ほかにも、2020年の電子政府ランキングで13ランク上昇を果たしたエストニアは、デジタル化対策を次々に進め「電子国家」と呼ばれるようになっています。また、台湾ではマスクマップアプリでコロナ禍のマスク不足を解決したIT大臣「オードリータン」氏が注目を集めるなど、世界中で政府主導のIT改革が成果をあげています。

日本におけるデジタル庁の新設は、国の方向性を決める上での大きな鍵になる可能性があります。しかし、デジタル庁ができたから終了ではなく、デジタル庁がどのような方向性のもとで政策をすすめていくのかについて、しっかりと見定めていくことが重要です。

今後も世界の動向について積極的に報告いたしますので、ぜひまた遊びに来てくださいね。

 

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