COLUMN海外メディア戦略コラム
世界のDX/デジタル先進国事情その2:デンマークやエストニア、台湾の事例を紹介
2021年9月にスタートしたデジタル庁。しかし、公開初日にデジタル庁と書かれた模型を手に抱え登場したり、事務方トップが初歩的な著作権違反をしたりするなど、国民からはデジタル庁に対する不安の声が高まっています。そしてさらに追い打ちをかけたのがデジタル庁の生みの親でもある菅総理大臣の退陣。デジタル庁はどうなってしまうのでしょうか?
日本でのデジタル庁の進展はさておき、世界では各国が独自のデジタル化、DX化を進めています。以前、イギリス、アメリカ、中国のDXについて紹介しましたが、本記事では、それ以外の国で行われている政府のデジタル化対策について紹介します。
国連によるEGDIでは日本は14位に後退
国連の経済社会局(UNDESA)が2年に1度発表している「世界電子政府ランキング」によれば、2020年における日本のランキングは2018年から4つ順位を落とし、14位という結果でした。国連加盟国193カ国のランキングであるため、上位であることにはかわりはないのですが、デジタル化先進国からはおいていかれる形となったことは間違いありません。
日本では2021年にデジタル庁が新たに新設されたこともあり、2022年もしくは2024年調査において大きな巻き返しが起こることを期待したいところです。
(画像の参照元は電子政府ランキングで日本は14位に後退、トップ3はデンマーク・韓国・エストニア)
デジタル先進国のDX事情>
上記のデータからわかるように、デンマークは昨今、世界一のデジタル国家として大きな注目を集めています。デジタル国家といえば、エストニアや台湾の存在も忘れてはいけません。
以下にデジタル先進国として注目のデンマーク、エストニア、台湾のデジタル化事情についてまとめます。
デンマークのDX/デジタル化事情
政策が進む国で、さまざまなデジタル化政策は人々の生活にも大いに役立っています。デンマークでは現在、デジタル化による以下のような恩恵が受けられるといいます。
・行政手続きがほどんとオンラインでのペーパーレスのため、書類提出のために政府機関に行く必要がほとんどない
・学校や保育園からの重要連絡はほとんどが専用アプリを介した電子データで送信される
・セルフサービスのレジが多く設置されており、レジ待ちをしないですむ
・ネットを介して銀行振り込みができるため、銀行に行ったり、ATMを利用したりする機会が少ない
・クレジットカードやデビットカード、お財布アプリなどが主流で現金を利用する機会が少ない
・個人番号により重要データが管理されているため、行政サービスや銀行口座開設などの手続きが非常に簡単
デンマークではざっと見ただけでも、デジタル化による多くの恩恵を受けていることがわかります。中でも1968年に取り入れられた「CPR番号」という個人番号がうまく機能していることで、行政サービスの利用も混乱なく実施できているようです。
日本とは人口規模が異なるため、同じように考えるのは難しいかもしれませんが、日本が実施したい施策をすでに取り入れている点で、参考にしたい国の1つといってよいでしょう。
エストニアのDX/デジタル化事情
デンマークと競うように、ヨーロッパそして世界を牽引するデジタル国家として知られるのがエストニアです。1997年に電子政府化の取り組みを開始し、その後2001年に「X-ROad」と呼ばれるデータ基盤システムを導入しています。
X-ROadとは、エストニアの電子化を支える高度なセキュリティを持った巨大なデータ共有システムです。すべての情報を暗号化し送受信することで、行政情報などの重要な情報に関してもデータによるやりとりが可能になりました。これにより、エストニアでは納税、医療、教育、交通などの行政サービスもすべてオンラインで実施できるようになっています。また、X-ROadによって市民は選挙の投票までもオンラインで実施できるとのこと。
日本が目指す1つの形として、参考にしたいデジタル先進国といえそうです。
台湾のDX/デジタル化事情
かべる人も多いのではないでしょうか。台湾は新型コロナウイルスが拡大し始めた2020年初頭、台湾のデジタル大臣「オードリー・タン」の指揮のもと、リアルタイムのマスク在庫アプリ「マスクマップ」を早期に開発したことで大きな話題となりました。
台湾では近年急速にデジタル化が進んでいますが、そのきっかけの1つに、オードリー・タン氏のガブゼロへの参加がありました。ガブレロとは市民プログラマーが集まり、意見を交換し合うコミュニティです。誰もが参加できますが、国の大臣クラスが急遽参加するのは初めてのことでした。
しかしながらオードリー・タン氏は自ら参加し、国のよりよい将来を願う有望な市民プログラマーと充実した情報交換を行いました。その後も、関心のある人々が自由に意見を述べることのできるプラットフォームを構築。台湾の急速なデジタル化は、市民の声を積極的に反映させるとともに、市民の力を集結させた結果ともいえるのです。
台湾のデジタル化というと、オードリー・タンデジタル大臣の強力なリーダーシップがきっかけと考える人も多いと思いますが、内実は、オードリー・タン大臣が実施した、市民の声を大切にするという方針と施策にあるといえます。
日本ではデジタル庁と市民の声はなかなかかみ合わないとも言われていますが、すぐ近くの台湾の成功事例を参考にしてみるのもよいかもしれませんね。
おわりに
本記事では、国家のデジタル/DX化を強力に推し進めている国である、デンマーク、エストニア、台湾におけるデジタル化事情について紹介しました。
国ごとの事情は異なるため、すべてを参考にすることは難しいかもしれませんが、日本のデジタル化に関してお手本にできることがあるかもしれません。
また、国家ぐるみでのデジタル化推進は、ビジネスチャンスを見つけるきっかけにもなります。ぜひ日本で今後進むであろうデジタル化についても注目してみてくださいね。