COLUMN海外メディア戦略コラム
BEHIND THE PRESS RELEASE:「ソフィアは嘘と引き換えに」MUTAN×ストーリーノート
What is Behind the Press Release?
光の当たる場所には、必ず影がある。
華やかなプレスリリースの一行には、企業が飲み込んだ葛藤や、まだ言葉にされていない決断が隠れている。
発表には収まりきらない逡巡や対立、理想と現実の合間で揺れる意思決定がある。
Behind The Press Releaseは、その見えざる部分に光をあてる試みである。
一行の発表文の裏側に潜む思考の軌跡をたどり、組織が未来を形づくる過程を記録する。
ここで描かれるのは、美辞麗句ではなく、真に人間的な営み。
企業が進むべき道を選び取る、その深層にある「葛藤の記録」である。
MUTANとストーリーノートが協力して開発したゲーム「ソフィアは嘘と引き換えに」が2025年7月3日に発売されましたが、そもそもこのゲームを制作するに至った経緯を教えていただけますか?

梅澤:
もともとはストーリーノートさんがオリジナルを一緒に制作しないかというお話を持ってきてくださったことが始まりだったと聞いています。
それが、MUTANもちょうど会社としてオリジナルタイトルの開発により力を入れたいと考えていた時期で、次作は当時流行っていたテキストアドベンチャーとか挑戦できたらいいねと話していたタイミングとも重なって、二つ返事で「やりましょう」となったみたいです。

原:
実は弊社内では最初からストーリーアドベンチャーと決めていたわけではなく、ディスカッションしていく中でストーリーアドベンチャーという方向になったという印象ですね。
ストーリーノートもちょうどオリジナルを作りたいというフェーズに入っていました。
当時は会社ができて5年くらいで、基本的にはクライアントワーク中心。他社製品のシナリオを考えるのが主な仕事だったんですけど、やっぱり”自分たちの作品”を作りたいという気持ちがあったんだと思います。
一方でストーリーノートはシナリオ専門で、開発部門を持っていないという問題もあったので、そうしたいろんな条件がある中で、MUTANさんにお願いすることになりました。
このプロジェクトがはじまったのは、僕が入社して1年目のことで「オリジナルのゲーム作りたいねー」というゆるい感じではじまりました。

ただ作ろうとなったけどネタがないとゲームは作れないので、とりあえずみんなでやってみたいネタを持ち寄って社内でブレストしていたんです。その中に”多重人格”というのがあって、「多重人格×アドベンチャーゲーム」というこれまであまり見たことのない形式でどんなゲームができるかなーということで今のカタチに落ち着いたという感じです。
これ以前にMUTANとストーリーノートでゲームを一緒に開発したことはあったんですか?
梅澤:
今回が初めてですね。
原:
たぶん(ストーリーノートの代表)藤澤と(MUTANの代表)渡邊さんがオリジナルゲームを作りたいということで一致して、実現したんだと思います。
このゲームでは殺人の罪に問われている多重人格の少女ソフィアに精神科医であるフィリップが監視カメラ越しに取り調べをするという斬新な設定になっていますが、これはどういう経緯で?
原:
登場人物と直接会話をする形式はありふれているし、こっちが話しかけたらあっちが話してくれるというの以外で、何かひと捻りできないかなーと模索していました。間接的なコミュニケーションで何かないかと話し合っている中で、例えばブレストで出てきたのが”教会の告解室”というアイディア。顔が見えない相手と会話することで捻りを加えたりするのもおもしろいなーと。そうしていろんなアイディアを試していく中で最終的に生き残ったのが監視カメラでした。
僕の中ではそこで”つながったなー”と感じたことがありまして。
ゲーム業界に入って5年くらいなんですけど、この会社に入る前はリアル脱出ゲームなどの体験型イベントを作っていて、その時によく出てきたテーマとして”覗き見”というのがあったんですよ。他人のスマホを覗き見てそこから謎を解こうとか、そういうのっておもしろいよなーって。なのでその”覗き見”というテーマがあの監視カメラというアイディアにつながったのかなーと後から考えて思いますね。
今出た教会のアイディアもとてもいいなーと思うんですけど、MUTANさんとまた共同で作ることはありそうですか?
梅澤:
他人のものを”覗き見”する背徳感に訴えかけるところって、やっぱり人の心を惹きつける魅力があると今回のタイトルでも感じたので、引き続き原さんやストーリーノートさんのお力を借りつつ、より没入感のある新しいゲーム体験に昇華していけると嬉しいです。
ソフィアをシリーズものにするではないにしろ、同じシステムを使って何か別のシナリオでやりたいという野望もあるので、教会のアイディアも使えるといいなと思います。
原:
ただ告解室のアイディアがボツになった理由というのも明確にあって、MUTANさんの強みってかわいい3Gモデルだと思うんですよ。なので告解室で顔が見えないというのはもったいないなーと。
梅澤:
3Dモデルのクオリティにももちろん自信はあるんですけど、プログラマーやプランナーといった技術力にも弊社は自信があるので、かわいいキャラクターが出てこないゲームもぜひ機会があれば作りたいですね!
多重人格にすることによって同じ人物なのに記憶が断片的でタイムラインがゴチャゴチャになるというアイディアはいつ頃生まれたんですか?

原:
あの構想は企画段階ですでにありました。
いろんな理由はあるんですけど、実は裏の狙いとして開発費をなるべく抑えたいというのもありまして。というのもインディーゲームってレッドオーシャンで当たれば当たるけど、当たらないと全然当たらないというのが現状です。そんな中で今回はテキストアドベンチャーゲームっていうレッドオーシャンの中でもレッドオーシャンなジャンルの中で、予算が膨らみすぎないように初期段階からワンシチュエーションでやろうというのが軸としてありました。
同じ理由でキャラクターも「多重人格だから1人作れば使い回しが効くでしょ」とか思っていたんですけど、実際にやってみると性格の違いや表情などを再現するために、結局5人分作るくらいの労力にはなってしまいましたけど(笑)
MUTANのモデル技術からインスピレーションを受けたところもあるんですか?
原:
そうですね。シナリオはかなりライブ感のある感じで作っていったので、キャラデザインやモデルがあがってくると、「めっちゃかわいいー!ならこういう会話いれよー!」というふうに一緒に作っていったところはあります。
会議を重ねるごとにストーリーが進展していった感じですか?
梅澤:
今回はシナリオがまるっと出来上がってから開発に入るというよりは、開発とシナリオが並行して進んでいったので、毎回お互いの進捗を持ち寄って、そこからどうすべきかを考えていく感じでした。シナリオ的に「こうしたい、あぁしたい」というのがあがってきたら、こちらはそれに合わせて仕様を変更していくというようなやり取りを週単位でやっていました。
ストーリーノートさんが企画書を持ってきた時の社内の反応はどうだったんですか?
梅澤:
私はその場にはいなかったんですけど、すごい可能性を見出せた企画書だったんだと思います。これはソフィアの魅力を最大限に引き出すモデルを作ることがうち(MUTAN)の任務だぞ、と熱意に燃えたそうです!
梅澤さんご自身はこのプロジェクトにどんなお気持ちで携わってらしたんですか?
梅澤:
シナリオを一番最初にチェックできるので、それがすごく嬉しくて。チェックしていてめちゃくちゃ感情移入しましたね。元々「プレイヤーの庇護欲を掻き立てたい」というコンセプトは会議で知っていたので、どんなかわいそうな女の子が登場するのかってある程度覚悟はしていたんですけど、蓋を開けてみたらまぁー本当にかわいそうで(笑)
原さんも藤澤さんもおっしゃってますけど「自分たちが携わった女の子はみんな不幸になっていく」って。本当にどんどん病んでいくんですよ。
なので、これが皆さんに届いた時にどんな気持ちになるのかとか、どこに心を動かされてこの子を守りたいと思ってくれるのかという、比較的プレイヤー側の視点に立つことを意識して見ていました。
原:
一応弁明させてほしいんですけど、僕はたしかに独立してシナリオを任されてはいたんですけど、定期的に藤澤に相談しに行っていて。最初にそれぞれの人格のバックグラウンドやトラウマみたいなプロフィールを持っていったんですけど「イヤ、まだ足りない。これではまだソフィアは人格分裂しない」と言われまして(笑)
プレイヤーが遊んだ時に「うっわぁ」とリアクションしてくれる域にまだ達していないということだったんだ思います。
梅澤さんはそのシナリオを読んでどうでした?
梅澤:
「うっわぁ」ってなりました。もう胸が痛くなって「私が守ってあげなきゃ!」って狙った通りになりましたね(笑)
ただシナリオはもちろんなんですけど、そこにゲームシステム。今回でいえば監視カメラ越しに“対話を重ねる”というシステムを入れたことで、より感情移入に拍車をかけられたんじゃないかなと思って。なので、できることなら一旦記憶を消して純粋にゲームを楽しみたいです(笑)これからプレイされる皆さんが羨ましいなーと思ってます。
原さんはご自身でシナリオを書きながら「これはさすがにかわいそすぎる」って思うことはあるんですか?
原:
全然ありますね。今回は殺人の罪を犯した多重人格の女の子に何があったのか、どういう経緯で殺人の罪を犯したのかを掘っていくんですけど、真相を特定できなかったら彼女は処刑されてしまうんですよ。なのでその処刑シーンとかは書きながら「うっわぁ」ってなってました。
特にいろいろある人格のそれぞれに精神年齢が割り振られていて、1番幼いエイミーっていう精神年齢9歳の人格がいるんですけど、その子の処刑シーンは本当に辛かったです。
それはご自身で書いてるから、書き換えることもできるわけじゃないですか?それは変えたいと思うんですか?
原:
うーん…でもそっちのほうがプレイヤーの皆さんが喜ぶというか、より心に残るシナリオになるだろうということで、悩みながら書いてました。
では皆さん心をグサグサ刺されながら開発していたんですね(笑)
原:
プレイヤーの皆さんに喜んでもらえるように嫌な気持ちになりながら(笑)

今回のプロジェクトでMUTANさんが特に迷われた・悩んだところはなんですか?
梅澤:
あまり表には出していないんですが、今回のプロジェクトは若手のチャレンジプロジェクトとして始まったという経緯もあったので、若手がオリジナルタイトルの開発を通してパワーアップしていくという目的も兼ねていました。おそらくストーリーノートさんも同じだったかと思うんですけど、MUTANは3人~多くて10人程度のチームで制作することが多く、今回はチームメンバーのほとんどを入社して2〜4年くらいの若手で揃えました。
またその上に、今回開発エンジンをunityからunrealに変えるという新たな試みも同時に行っていたので、より負荷がかかるプロジェクトでもありました。(シナリオの執筆と開発が並行していたことにより)注文を受けながら即時プログラマーが組んでいくというスピード感の中で、クオリティと期限を守りながらどこを落としどころにするべきか、模索しつつの開発だったのが難しくもあり結果としてとても有意義だったという印象です。
今回Unrealに挑戦されたのはなぜですか?
梅澤:
MUTANでは受託案件の開発を多く取り扱っているんですけど、受託では基本的に開発環境は選べないんです。 そしてMUTANに依頼していただく案件の多くがunityでの開発でした。 MUTANはUnrealでの開発もバッチリ出来るんだぞーというところをお見せするには、今回のオリジナル開発がいいチャンスだなと。 Unrealは実績がないと案件出せないってよく言われるのですが、じゃぁ今回のオリジナル開発で実績作っちゃえ、ってのがきっかけです。
実際にunrealで開発してみていかがですか?
梅澤:
様々な学びがありました。まず業務としてUnrealでゲームをまるっと一本作れることを示せたのは会社として大きな財産です。 歴史のある開発エンジンなので基本的にはUnity開発時と遜色なく開発ができたと思います。 とは言え、やはりお作法的なところは実際にやってみてわかることも多かったので開発には良い経験だったなと思います。
MUTANといえばやはりクオリティの高いキャラクターモデリングだと思うんですけど、実際にあがってきたデザインを見た時どう思いました?
原:
最高すぎるなーと(笑)キャラデザイナーの清原紘さんからあがってくるデザインを見るのが毎回楽しかったんですけど、最初のキャラデザから3Dモデルになっていく過程であったり、3Dモデルも徐々にブラッシュアップされていく過程を見て「こんなに良くなるんだ」って驚きましたね。
例えば髪の表現だったり、瞳がどんどん良くなっていて。特に清原さんのキャラデザインは瞳が印象的なので、その目元周りのニュアンスは開発の終盤でグンと良くなったって思いました。
キャラクターデザインはもちろんなんですけど、実際にゲームになると3Dモデルの表情や感情表現などが重要になってくると思いますが、それの演出はどちらが担当されるんですか?
原:
こちらからは「このモーションとこのモーションがほしいです」という依頼をして、それをMUTANさんのほうで制作していただいて、あがってきたものを確認するという流れですね。

梅澤:
多重人格という設定の醍醐味でもあり良さとして、“入れ物は同じなのに人格によって表情や所作に軽微な差が出ることによる違和感”があると思うんです。キャラクターデザインを清原さんに依頼したのも、表情の描き分けが上手い方がいいよねという話になり、それなら漫画家さんだ!と「それぞれの人格の違いがわかるように表情などの違和感を描き分けてほしい」とお願いしました。そういった経緯もあり、出来るだけイラストに忠実な見た目を再現したかったので、こだわるべきポイントなどを清原さんにヒアリングしたうえで、MUTANのモデラ―やモーションデザイナーが腕によりをかけてソフィアに命を吹き込んでいきました。
このゲームは英語と中国語にも対応していますが、海外ユーザーを意識した部分はありますか?
梅澤:
舞台が外国ということもあって、文化の違いを意識した点もあります。例えば日本のみに向けた作品であれば、差し入れでタバコなんてアイテムもあくまでフィクションとして許容されるかと思うのですが…アメリカなどの地域で問題視されてしまう可能性を考慮して、キャンディに変更したということがありました。
あと、ソフィアの年齢にも気を使いました。やはり未成年の扱いは国によって違うので、そこはどの国でも成人として扱われる年齢にしたほうがよいのではないかと原さんと議論したりもしたんですが、結局ソフィアは当初の予定通り17歳でいくことになりました。
原:
成人していると、救いたいという気持ちよりも「自分でなんとかしろよ」という気持ちになるじゃないですか(笑)プレイヤーが助けたいと思えるモチベーション、思いやすい設定として年齢は重要なファクターでした。遊んでいる皆さんがより感情移入しやすいようにという工夫ですね。
原さんは今回はじめてリーダーとしてこのプロジェクトに関わられたと思うんですけどいかがでしたか?
原:
大変すぎますね。そもそもデジタルゲームを作るのがはじめてだったので、そこの違いはありました。これまで作っていたリアル脱出ゲームと基本的な考え方は一緒だと思うんですけど、例えばキャラクターに話しかけた時にこう返す、っていうのは人であれば「なんとなくこうしてください」と口頭であったり身振りで伝えたりして伝わるんですけど、ゲームとなるとそれを一から全部伝えないといけないのはめちゃくちゃ大変だなーと。
シナリオに関しても、当初予定していたボリュームよりかなり膨らんでしまいました。今回のゲームの仕組み的にキーワードを入力して、その返答からまた新しいキーワードを探して、という質問の連鎖で真相に辿り着いていくというシステムなんですけど、ゲームデザインとシナリオがめちゃくちゃ密接に関わってくるので、そこもかなり大変でした。
単純に感動する物語を書くんじゃなくて、謎解き・ミステリーとして成立してないといけないという要件も満たさないといけないというのもありました。どれくらいの難易度にすればいいのか、ソフィアのキャラストーリーと殺人事件のグランドストーリーのバランスをどうするかとか、こうしたところは藤澤と何度も相談しながらやりましたね。
謎解きとしての完成度とストーリーとしての完成度、これを両立するので特に難しかったところはなんですか?
原:
これは我々だけではできなかったことで、MUTANさんと一緒に開発したからできたという部分が大きかったと思うことがあって。僕が元々謎解きをやっていたというバックグランドから、割と硬派な謎解きで最初は作ってたんですよ。キーワードを連鎖させていって、時々ひらめきでキーワードを入れる必要があるという設計で、一旦ガッチリとシナリオを作ったんです。
その時点でもキャラクターのバックグラウンドとかストーリーも含まれてはいたんですけど、そこまで進めたところで「もっと感情移入できるようにしたいよね」となったんです。
そしたらMUTANのプランナーさんから「こちらが何も操作していない状態の時に、あっちから話しかけてくれてるっていうのはどう?」というアイディアが出てきて。それも事件とかゲームに直接関わるようなことではなくて「あなたはどう思う?」とか「あなたは何が好き?」みたいに、プレイヤーに対して質問を投げかけることにしたんです。こういう凪みたいな会話、なんでもない会話だけどプレイヤー自身に興味を持っているという演出を加えることでよりソフィアに愛着が湧くんじゃないかっていうアイディアはMUTANさんと一緒に開発したからこそ出てきましたね。
これも実は議論があって、「推理している時に急に別の話をされたら混乱して推理の邪魔になるんじゃないか?」という意見もあったんですけど、やっぱりそのほうがよりゲームを楽しめるという結論になりまして。なので謎解きの部分はしっかり硬派に謎解きとしてありつつ、キャラクターにより感情移入しやすいような工夫を加えることができました。
今回の開発で1番難航した時期・部分はなんですか?

原:
やっぱりシナリオですかね。実は一回全ボツになってるんですよ。
ミステリーっていろんな軸があって、ハウダニットとフーダニット、どう殺したかと誰が殺したかを推理するって方向性があって、結構これにフォーカスしてるのが多いんです。なので最初はそういうミステリーとして書きはじめたんですよ。例えば凶器があったとしたら、まずどの人格に渡って、それがどの人格に渡って、しかもそれが箱の中に入ってるから凶器だと気付かずに渡してて、みたいなミステリー要素の強いシナリオではじめたんです。
ただそれをやっていくと「つまんないなー」となって(笑)
あとでその原因を考えると、断片的な情報で捜査するってただでさえストレスのかかることなんですよ。そうするとただただ情報整理しながら事件の真相という無機質なものをモチベーションにし続けないといけないなって。「この子どうなっちゃうんだ」ってモチベーションを作ってあげないと、プレイヤーにとっては自分とまるで無関係な事件の真相を追い続けるだけになっちゃってモチベーションを保ちにくいよなーとなりまして。
なのでそれまでのシナリオは一旦全ボツにして、キャラクターにフォーカスしたシナリオに変更して。最初からキャラクターのバックストーリーの設定はあったんですけど、そこをもっと掘っていけるゲームにしようとシフトチェンジして今のようなカタチになりました。
事件を掘り下げるのではなく人間を掘り下げてるということですね
原:
監視カメラ越しに覗き見てるのは彼女自身じゃなくて、彼女の心の奥に隠されたトラウマみたいなものを覗き見るゲームなんだという軸になって。やっぱり一回書いてみておもしろくないとなったからこそ「こっちが軸なんだ」というのが見えたんで、そこから再構築できました。
ちなみにそれは開発しはじめてどれくらい経ってからですか?
原:
1年経ったあとですね(笑)
梅澤:
発売時期を半年ずらしました(笑)
原:
泣きながら書きましたよ(笑)その時期、海外のゲームショーとかに視察に行ってたんですけど、そこでもずっと書いてました。
梅澤さんが今回のプロジェクトで1番苦労した点はなんですか?
梅澤:
海外に進出して行きたいというのが前提にあったので、このゲームに相応しいプロモーション方法を探すことに苦労しました。中でもターゲットとするペルソナをどう設定するかでかなり悩んで…もちろん年齢層と性別はあるんですけど、ミステリー好きというジャンルに絞ったプロモーションも考えたり。
今回は開発の初期段階で”テキストアドベンチャーが好きな10代後半から30代”とかなり広めにターゲットを設定していたので、もうちょっと絞ったほうがいいのかなと思うことも多々ありました。例えばもっとニッチでコアなところに刺さるプロモーションだったり。これに関しては今からまだやっていけることがあるので、議論を重ねて最善の策を講じたいですね。
先ほど”庇護欲”というキーワードが出たかと思うんですけど、新世紀ヱヴァンゲリヲンの綾波レイのようなキャラクターというのも企画会議ではよく出ていました。そうなると20代から30代、40代もターゲットに含まれるのかなーとも思いますね。
原:
ゲームってそもそも合う・合わないがあるじゃないですか?このゲームって見た目はポップだったりするんですけど、中身が結構硬派な謎解きなので、そこでミスマッチが起こらないようにターゲットを絞るというやり方もあるとは思いますけど、こればっかりはバランスなので難しいですね。
ここまで「ソフィアは嘘と引き換えに」の開発秘話を聞いてきましたが、お二人が考えるこのゲームの最大の魅力はなんですか?

梅澤:
私がこのゲームで特に気に入っていることが、脳汁が出る瞬間が何度かあることなんですよ(笑)シナリオもゲームシステムも完全に知ってるのに、それでもプレイしてると「おおーー!」って脳汁が出る瞬間が何度かあるので、初見でそれを見るプレイヤーの皆さんにはもっとすごい感動を味わっていただけるんじゃないかと思っています!
原:
その脳汁が出る瞬間っていうのが、それぞれの人格のトラウマの核心に迫るキーワードが出る瞬間なので、「この子ってこんな子だったんだ!!!」ってわかった瞬間に脳汁が出るように設計したんです。謎解きとしての情報が繋がった瞬間でもあり、この子の物語の真相がわかった瞬間でもあり、そのピークを同じタイミングにするように狙いました。
梅澤:
ぜひそこを楽しんでほしいですね。
MUTAN 会社概要
https://mutan.co.jp/

会社名 株式会社MUTAN -MUTAN Inc.
設立 2007年1月11日
所在地 本社 〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-9-7 東池袋織本ビル2F
代表者 代表取締役 渡邉 弘之
事業内容 ゲームソフト開発・販売、CGデザイン業務の請負
従業員数 100名 ※ 関連子会社込
関連子会社 株式会社 Apper 株式会社 Mutan Insight 株式会社 ブラウニーズ



