COLUMN海外メディア戦略コラム

アジアにおけるキャッシュレス事情(2019)

野村総合研究所が2018年に公開した調査報告書によると、日本のキャッシュレス比率(カード決済+e-money決済)は2007年に13.6%、2016年に19.8%であったと報告されています。これは世界的に見ると、非常に低い値です。

その現状を打破するため、日本のモバイル決済アプリは、2019年に相次いでキャンペーンを実施し、市場を賑わわせましたが、そんな中、主要モバイル決済アプリになるだろうと見込まれていた「7pay」が2019年9月30日にサービスを終了するという情報が飛び込んできました。日本でのモバイル決済の浸透には、まだまだ時間がかかりそうです。その一方で、世界では着々とモバイル決済利用の環境整備が進んでいます。海外に旅行をすると、様々な国でモバイル決済が気軽に行われている姿に驚くことでしょう。そこで本記事では、日本から比較的近いアジア圏のモバイル決済事情について紹介します。

中国

世界中で、最もモバイル決済が進んでいる国といっても過言ではない中国。現在では、ショッピングセンターやスーパーマーケットはもちろんこと、北京では道端の露店ですらモバイル決済で品物を購入できるお店が増えています。国の政府機関主導でキャッシュレス化を推進している国が多い一方、中国は、民間企業主導で巨大モバイル決済市場を築き上げたという興味深い背景があります。

中国のモバイル決済の先駆けとなったのは、中国の巨大企業アリババグループの「支付宝(Alipay)」でした。2004年に中国国内でサービスを開始したのち、徐々に人気を獲得し、中国のモバイル決済市場を独占します。しかし、2013年に、チャットアプリ「WeChat」で有名なテンセントが「微信支付(WeChat pay)」でモバイル決済市場に参入。「微信支付」の機能の1つ、仲間同士で簡易に送金が行える機能が中国国民に大ヒットするとともに、テンセントがあらゆる店のレジに「微信支付」のQRコードを張り付けたことで、モバイル決済が急激に浸透していきました。

現在では、この2つのモバイルペイアプリが中国モバイル決済市場の約90%を占めており、しのぎを削っています。

 

支付宝(Alipay)

公式アプリはこちら:支付宝(Alipay)

 

微信支付(WeChat pay)

公式サイトはこちら:微信支付(WeChat pay)

 

韓国

韓国は、キャッシュレス化が非常に進んでいる国として知られており、野村総合研究所の同調査では、2016年の時点でキャッシュレス比率が96.4%と、調査国の中で最も高い値でした。現在韓国では、多くの中国人観光客に対応するため、先に挙げた中国のモバイル決済アプリを対応させる店舗が増えてきましたが、韓国のモバイル市場を独占しているのは、韓国の巨大企業SAMSUNGが運営する「SAMSUNG Pay」で、現在約80%のシェアを誇ると言われています。また、2016年1月、韓国の中央銀行(BOK)は、「Payment System Policy Roadmap – Vision 2020」を発表しました。効率的かつ安全なキャッシュレス取引の拡大を2020年までに目指すというものです。今後も韓国のキャッシュレス化は着実に進んでいくと考えられます。

 

SAMSUNG Pay

公式サイトはこちら:SAMSUNG Pay

 

フィリピン

フィリピンにおいては、銀行口座を持っていない家庭が86%にも上ることから(中央銀行調べ)、資産を安全に管理することができるモバイル決済に注目が集まっています。フィリピン中央銀行が掲げた「2020年までにすべての金銭取引の20%をキャッシュレス化する」という方針に則り、いくつかの民間企業がモバイル決済アプリを開発し、認知度が高まってきました。とくに人気のアプリは、フィリピンの大手電気通信事業者「Globe Telecom」が提供する「GCash」で、現在2000万人以上の人々が利用していると言われています。しかしながら、マニラなどの都市部ではモバイル決済対応店舗が急激に増加している一方、多くの地域においては、利用できる環境が整備されていないという問題もあり、今後、どのようにモバイル決済の利用が広まっていくかについて注目が集まっています。

 

GCash

公式サイトはこちら:GCash

タイ

日本では、大人気アプリ「Line」のモバイル決済アプリ「Line Pay」の利用がなかなか広がらない現状がある中で、「Line Pay」の活用が積極的に進められている国があります。それがタイです。各国ごとに人気のチャットアプリがありますが、タイでは日本産の「Line」の利用が非常に人気です。それに伴い、「Line Pay」の人気も自然に高まり、現在は主要モバイル決済アプリの1つとされています。また、「Line Pay」と提携した「Rabbit Line Pay」は、駅での乗車運賃の支払いや、駅構内店舗でのモバイル決済が可能なほか、通常長蛇の列に並ばなければならない公共料金の支払いが即座にできることから、現在急激に人気が高まりつつあります。また、タイ政府は2015年に「タイランド4.0」を発表しました。これは、2036年までに国内産業を押し上げ、先進諸国の仲間入りを目指すことを宣言したものです。目標達成の重要課題として、デジタル技術の進歩の重要性が挙げられており、モバイル決済の拡大を政府が後押しする形を取っています。対応店舗はまだそれほど多くはありませんが、都市部ではタイの名物「屋台」においてもモバイル決済ができるようになりつつあり、今後利用が急速に進んでいくことが予想されています。

 

Rabbit Line Pay

公式サイトはこちら:Rabbit Line Pay

インドネシア

インドネシアでは、政府が積極的にインドネシア国民へのモバイル決済アプリの利用を呼びかけています。インドネシアでは、15歳以上の約半数が銀行口座を所有していないと言われており、資産の管理が大きな課題となっています。その一方で、携帯電話の普及率は91%と非常に高く、政府はそこに目を付け、モバイル決済の拡大を推し進めています。現在、急激にモバイル決済市場が成長している国の一つです。

インドネシアでは、配車サービスGo-Jekが運営する「Go Pay」が人気アプリの1つです。Go-Jekが行っている配車サービスや宅配事業、買い物代行サービスなどとモバイル決済アプリの相性がマッチしており、利用者の数を着実に伸ばしています。「Go Pay」は、今後はインドネシア国内だけでなく、東南アジアにもサービスを拡大する見込みとのことです。

 

Go Pay

公式サイトはこちら:Go Pay

 

終わりに

国によってモバイル決済/キャッシュレス状況が異なることがわかりましたが、各国で人気のアプリは、それぞれの国の政策とマッチしていたり、需要の高いサービスが内包されているものが多かったように感じます。今後も世界で進められていくモバイル決済の流れにぜひ注目したいところです。

※本コラムの情報は2019年制作時のものです。

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