COLUMN海外メディア戦略コラム
アジアでバズった企業動画7選(2018)
近年アジアでも急速にスマートフォンの普及率が上昇し、企業の認知度アップやブランド構築の効果的な方法の一つとして、アジア圏でもオンライン動画が活発に利用されるようになってきています。動画の内容も数十秒のものから、ストーリー性が高く、まるで短編映画のようなものまで様々。SNSなどを介してバズれば一気に多くのユーザーに企業や商品の存在を知ってもらう事が可能になっています。
そこでこの記事では2018年、アジアで多くの人に視聴された企業のバズ動画7本をご紹介します。
*再生回数/シェア等は調査時点:2018年8月30日のものです
1. Apple
3分間の物語(英題:Three Minutes – A short story by Peter Chan —)
2,332,841回再生 2018年2月1日公開
実話を基に、iPhoneXを使用して撮影された親子の感動物語。中国本土で最も長い走行距離を誇る列車の車掌を務める母親は、毎年のように旧正月を祝う家族達の笑い声で溢れる車内で息子を思います。しかし今年は息子を預けている妹が、母親に会わせようと列車の停車駅まで息子を連れてやってきます。列車の到着から発車まで、親子に与えられた時間はたったの3分。限られた時間の中で、息子は母親との約束を果たそうと奮闘します・・・。人口560万人のシンガポールに向けて公開されたこの動画は、230万回以上の再生回数を記録しています。
2. Turkish Airlines
機内安全ビデオwithレゴキャラクター(英題:Safety Video with The LEGO Movie Characters)
19,638,377回再生 2018年8月1日公開
「機内安全ビデオは退屈だ」という常識を覆すトルコ航空の動画が、2018年8月1日にYou Tubeでリリースされるやいなや、たちまちアジア圏を中心に爆発的人気に!動画内では、日本にも多くのファンを持つレゴのかわいいキャラクターたちが、楽しくコミカルに機内安全ビデオを彩り、子供から大人までが動画に釘付けになります。この動画は、リリースからわずか4週間で再生回数2000万回に届く勢いで、「今まで見た機内安全ビデオで1番!」などの好意的なコメントが多数寄せられています。
3. McDonald’s Singapore
マクドナルドラマダン(英題:McDonald’s Ramadan – Full Length)
1,142,761回再生 2018年5月14日公開
日本ではあまり馴染みのない、イスラム教徒が行う約1ヶ月間の断食期間「ラマダン(Ramadan)」をテーマにしたシンガポールマクドナルドの広告動画。期間中の日の出から日没までの時間には水の摂取も禁止されるラマダンでは、”善人であれ”という強い教えのもと、人への親切心を重んじます。マクドナルドのデリバリースタッフとして働くイスラム教徒で主人公のZulは、デリバリーを通して多くの人々とふれあい、空腹感や疲労感の中でも、時には人を助けたりして人々を笑顔にしていくZul・・・。そんな、時間を忘れて働くZulが、ラマダン終了時刻に訪れた先でお客さんの優しさに触れ思わず笑顔に・・・。動画の最後に投げかけられる「Share the Sprit of Ramadan(ラマダンの精神を分かち合おう)」というメッセージが、信仰を越えて心に響く動画です。
4. Jollibee
ステータス(英題:Status)
4,181,225回再生 2018年2月2日公開
フィリピンで一番人気のファストフードチェーンと言えば、マクドナルドではなくこのJolllibee!数々の失恋を経験し、トゥルーラブを探し続ける女性が家族との触れ合いを通じて本当の愛とは何かに気づくというハートフルドラマに仕上がっています。実話を基にしたストーリーが共感を呼び、多くの独身フィリピン人からの支持を集めています。
5. Samsung
ラヤのギリギリ劇(英題:Raya Last Minit)
1,638,112回再生 2018年5月25日公開
1か月間のラマダンが終わった後のマレーシア最大のお祭りである祝日「ハリラヤアプサ」。友人たちとのホームパーティが終わった途端、30分後に到着するという突然の親戚からの連絡が!パーティ直後で荒れ放題の家は大パニック!このピンチを救うのがSamsungの電化製品の数々。何とか次のパーティーの準備を整えることができたものの、最後に予想外の展開が・・・。親戚との大切な時間、空間創りをテーマにユーモア溢れる動画になっています。
6. Singtel
リムさん一家の再会(英題:Mr Lim’s Reunion Dinner)
1,251,753回再生 2018年1月18日公開
アジア最大級のシンガポールの通信会社であるシンガポールテレコムが、中国の旧正月をテーマに家族の絆を描いた動画。海外で暮らす子供たちや孫との再会に胸を踊らせながら何日も前から準備を進めるリムさん。しかしそんなリムさんの気持ちをよそに、子供たちからは今年は帰れないとの知らせが入る・・・。来ないと知っていながらも、子供たちの大好きなごちそうを用意し、一人寂しく食事を始めるリムさんのもとに現れたのは・・・。人と人をつなぐ通信会社らしく、家族の絆をストレートに描いています。
7. Sunsilk
サンシルク – ヘア・トーク ~構想 ジェイ・ウォルター・トンプソン・バンコク~(英題:Sunsilk ‘Hair Talk’ – J. Walter Thompson Bangkok)
37,000,000回再生以上 (全メディア合計) 2018年6月8日公開
世界でもLGBTに寛容な国として知られるタイでは、実に18種の性別があるというほどオープンなお国柄。しかし、そんなタイでもトランスジェンダーなどの性的マイノリティーの人々が抱える問題や差別が残っているのもまた事実です。世界でヘアケア商品を販売するSunsilkは、新たに発売したブランド”Hair Talk”のプロモーション用に、Miss Tiffany Universe 2017準優勝のRock Kwanlada氏の半生を見事に描いた動画で大きな話題を呼びました。動画では、幼少期からコンテストまでの周りの人達や父親との関わりを、実話を基に忠実に再現しています。この動画がブランドウェブサイト上に登場すると、わずか48時間で250万回以上の再生をオーガニックビューワーのみで記録。たちまち動画の内容が話題となり、FacebookやYoutubeで火がつくと爆発的な人気に。またたく間にタイ国内だけで全メディアでの合計再生回数が3700万回以上を記録するモンスター広告となりました。
このようにアジアの企業バズ動画を見てみると、動画の中では商品やブランドを強く意識させる演出が少ないという共通点があります。広告とは思えないほどに惹き込まれるストーリーや、見ているだけで楽しい動画など、その多くは視聴後に、”あれ?これって何についての動画だったっけ?”と思わせるほどに「広告感」を与えない内容になっています。人と人との繋がりがバーチャルになった現代で、多くの人気動画が家族や友人との真の絆をテーマにしているものが多いことからも、現代人が本当に求めているものが垣間見えていると言えそうです。