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AIが市場調査にもたらす4つの影響

AI(人工知能:Artificial Intelligence)に関連したさまざまなテクノロジーが進化していくことで、リサーチャーや市場調査コンサルタントは新しいキャリアを探さなければならなくなると思うでしょうか?

ご安心ください、答えは「ノー」です。実際には、市場調査の分野においてはAI関連テクノロジーが発展することによって効率性やより深みのある分析、プロセスにおけるより深い洞察がもたらされることになります。つまり、現在のものよりももっと価値のあるものになる可能性を秘めているのです。

ここで話をベーシックなところに戻しましょう。そもそも、AIとはなんでしょうか? AIの基本的な定義は「人間の知性が必要となる作業をコンピューターに実行させるためのサイエンス・テクノロジー」です。集められたデータのなかからプログラムが隠されたパターンを発見したり、予測をしたりすることを可能にするアルゴリズムによって成り立っているテクノロジーで、今後選択するべきオプションを決定したり、状況予測をしたりするために活用されています。

検索ビジネスの業界では、数テラバイトものビッグデータを簡単に取捨選択できるAIの持つ高度な処理機能を使い、ものごとの隠された結びつきや洞察的知見を見つけ出すために利用しています。

一方、市場調査の現場においてはまだそれほど大きなインパクトをもたらしてはいません。しかしAIがドラマティックなポテンシャルを秘めているということは明らかであり、ここではAIが市場調査の未来にもたらすであろう4つの影響についてご紹介していきます。

  1. データセットのリッチ化

最近ではスマートフォンやタブレット向けにプラットフォームを用意し、オンラインで回答してもらうモバイル・サーベイが増えています。そのメリットはGPSによって回答者の位置情報を付随的に知ることができるということ。

しかし得られるメリットはそれだけではありません。AIが進化することによって、ソーシャルメディアなどのパブリックな環境で入手可能な情報ソースから個人的なウェブ検索履歴に至るまで、もっと幅広い情報を入手できる可能性が拡大しています。

こういった付随的なデータセットが加わることで、分析の過程でより多くのコンテクストやデータの重層性がもたらされます。そのことにより、いわゆる「社会的望ましさによるバイアス」(回答者が自らが信じていることではなく、社会的にもっとも望ましいと思われているものに従って回答するという傾向)のような市場調査における問題点を克服することにもつながります。

それはなぜでしょうか?

AIの導入によって位置情報やソーシャルメディアにおける活動、検索履歴などの付加的情報が含まれることになり、回答者が回答した行動の内容と、実際の振る舞いとを比較することが可能となるためです。つまり、回答の内容と実際の行動との間に齟齬がないかをチェックできるようになるのです。

 

  1. サンプリングの精密化

市場調査の対象をサンプリングする際には、伝統的な統計学的アプローチを採用して行動やニーズを絞り込んでいく方法が一般的です。ところが、調査の対象が少数派となるケースや、今後のニーズを予想するために市場調査を行うとなった場合、こういった伝統的なアプローチではどうしても心もとないもの。

AIを導入したサンプリングを導入することで、例えば「来年インドネシアへのバケーション旅行を計画している50代以上の男性」といったとても限定された条件のもとで、該当する可能性のある回答者をピックアップすることが可能になるでしょう。これは伝統的な方法では到底なし得ないことでした。

これは、ユーザーがブラウジングを行った際に発生した膨大なデータセットを対象にAIを使ってクローリングを実施し、候補者を見つけて身元の確認をするといった手順を踏むことで達成できます。

 

  1. 能動的かつ知的なアンケート

これまでのアンケートはすべての設問をあらかじめ決定したうえで行なっていたため、調査の途中で設問のアップデートをフレキシブルに行うことがなかなかできませんでした。

一方、アンケートにAIを導入することで、実際に投稿される回答に柔軟かつリアルタイムに対応することが可能になります。

例えば、解答欄の「その他」に入力された回答をリアルタイム分析することにより、新しく別の選択肢を追加することが可能。さらに洗練されたプラットフォームであれば、自然言語処理のテクニックを応用してオープンエンドのコメントを徹底的に分析し、定性的なエレメントを追加することでアンケートをより効果的なものにできるでしょう。

 

  1. より深い洞察

市場調査のプロセスにおいてもっとも時間を要するのは、データ集計や要約統計量(標本における分布の代表的な特徴を要約して表す統計学における値)を出す過程です。また、市場調査のサービスを提供している会社の多くでは、依然としてネット・プロモーター・スコア(Net Promoter Score:顧客が継続して利用する意向を持っているかを知るための指標)をはじめとした慣習的かつ伝統的なメトリクスを使い続けています。

ここにAIのアルゴリズムを導入することで、初期のデータ分析がすべてオートマチック化され、サマリーを自動作成できるだけでなく、初期分析までを任せることが可能になります。

このメリットによってリサーチャーは長時間の拘束から解放され、データに潜んでいる関連性や洞察を見つけ出すという本来の業務にフォーカスできるようになるのです。

 

まとめ

AIはリサーチャーの仕事を奪う存在ではなく、彼らが新たな価値を生み出すための「仲間」となるべきものです。市場調査につきものであった反復的で時間ばかりかかる、そしてしばしば面白みのない作業の多くをAIが代わりに引き受け、自動化してくれるのです。

ここでご紹介したAIとの理想的な関係が現実のものとなることで、市場が備えている真の意向や動向をより的確に把握することができるようになります。そして最終的にはより良い意思決定プロセスのあり方やポジティブなビジネス・インパクトをわたしたちにもたらしてくれるでしょう。

 

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